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(更新:) 入浴の時間

昔のお風呂|蒸し風呂から内風呂までの移り変わりと、今に残る名残

窓から日が差す木の縁の浴槽に、蛇口からお湯が注がれ、湯気が立っている

木の浴槽や、見たことのない道具は、どう使われていたのか。今の家のお風呂は、蛇口をひねれば湯が張れて、ボタンひとつで温度が決まります。その形になるまでに、お風呂は何度も姿を変えてきました。

この記事は、蒸し風呂から始まったころ → 江戸時代の銭湯 → 木の浴槽から内風呂へ → 昔の家のお風呂の段取り → 今の家のお風呂 → 今に残っている名残、の順にまとめました。

1. 始まりは「湯につかる」より「蒸す」形だった

日本のお風呂の始まりは、仏教の伝来とともに広まった寺院の湯と結びついています。僧侶が体を清める行いとして湯を使い、平安時代には貴族の屋敷にも湯を使う部屋が設けられました。寺院が庶民に湯を開く施浴も行われ、鎌倉時代には湯を使わせる場が町にも広がっていきます。

このころのお風呂は、今のように浴槽に湯をためてつかる形ではなく、湯気で蒸す「蒸し風呂」が中心でした。石や岩を焼いて水をかけ、立ちのぼる湯気のこもった空間で汗をかく形で、蒸気浴とも呼ばれ、今のサウナに近い使い方です。各地の温泉では湯につかる形も続いていたので、蒸す形とつかる形が並んでいました。

言葉にもその名残があります。蒸気を使う形を「風呂」と呼び、湯につかる場所は「湯屋」「湯殿」と呼び分けていました。今は湯につかる設備を風呂と呼びますが、もとは別のものを指す言葉でした。

  • 風呂|湯気で蒸す形。岩風呂・釜風呂などが各地に残っています。
  • 湯屋|湯を使う施設。のちの公衆浴場・銭湯につながる呼び方です。
  • 湯殿|屋敷の中で湯を使う部屋。「お風呂を昔風に言うと」で挙がるのはこの言葉です。

2. 江戸時代の銭湯と、戸棚風呂・柘榴口

江戸時代になると、町に銭湯が広まりました。家で湯を沸かすには水も薪も手間もかかり、町では銭湯で湯に入る形が広まっていきます。

当時の銭湯には、湯気を逃がさないための工夫がありました。浴槽の前に戸を立てた戸棚風呂や、低い入り口をくぐって浴槽に入る柘榴口(ざくろぐち)と呼ばれる形です。湯気がこもるぶん中は暗く、湯につかる部分と洗い場が仕切られていました。蒸す形から湯につかる形へ移るあいだの、両方が混ざった姿といえます。

銭湯は人々が集まる社交の場でもあり、男女が同じ浴槽に入る混浴の形も長く見られました。のちに禁じられたり、また戻ったりをくり返し、仕切りが設けられていきます。都市で湯に入る習慣が広がった背景には、この銭湯の風呂文化があります。

3. 木の浴槽から、タイルの洗い場と内風呂へ

家に据えるお風呂、いわゆる据え風呂は、農家など水と薪が手に入る家から広がりました。木でできた浴槽を、下や横から焚いて沸かす形です。

呼び名 どんな形か 特徴
五右衛門風呂 鉄の釜を直接下から焚く浴槽 釜の底が熱くなるため、木のふたや底板を沈めて足を乗せます
木桶風呂(鉄砲風呂) 木の浴槽の中に、筒状の焚き口を立てたもの 筒の中で薪を燃やし、湯を直接温めます
改良風呂 焚き口を外に出し、浴槽と火を分けた形 浴室が煙で汚れにくく、沸かす手間が減りました

明治時代以降は、浴室そのものの作りも変わります。洗い場にタイルが貼られて水を流しやすくなり、衛生の面でも扱いやすくなりました。大正時代から昭和にかけて浴槽の素材も木から金属・プラスチックへと移り、ステンレスの浴槽や、ガスで沸かす風呂が使われるようになります。家庭に給湯器が入って、家の中にお風呂がある「内風呂」が普及しました。湯を張るのも、シャワーを浴びるのも、火の番をせずにできるようになります。それが広まるまでは銭湯と家の風呂が並んで使われ、湯に入る形式が二つありました。戦後は、浴室ごと組み立てて運び込むユニットバスが使われるようになり、団地やアパートなどの集合住宅にも広がって、現代の浴室のスタイルになりました。

今のお風呂は、湯量も湯温も数字で決められます。自分の家の浴槽が何リットルかはお風呂は何リットル?で確かめられます。

4. 昔の家のお風呂は、入るまでが仕事だった

昔のお風呂の話で写真に写るのは浴槽や道具ですが、暮らしのうえで今と大きく違ったのは湯を用意するまでの段取りです。

  • 水を運ぶ|井戸や水道の口から、桶で浴槽まで運びます。浴槽いっぱいにするだけで何往復もかかります。
  • 薪を用意して焚く|薪を割り、焚き口で火をおこします。沸くまで火の番をして、湯気の立ち方で加減を見ます。
  • 沸くのを待つ|入りたい時刻の何時間も前から始める必要があり、お風呂は毎日のものではない家もありました。
  • 家族で順番に入る|一度沸かした湯を家族で使うため、入る順番が決まっていました。
  • 残り湯を使う|湯を捨てずに、翌日に沸かし直したり、洗濯や掃除に回したりしました。

水の量も火加減も、手と目で決めるものでした。今のお風呂で数字にできるのは、昔は人の手が覚えていた部分です。湯につかる時間の目安は湯船には何分つかる?にまとめました。

5. 今の家のお風呂で、過ごす時間をつくる

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6. 今のお風呂に残っている、昔の名残

段取りがなくなっても、そのころの習わしは今の入り方に残っています。

今していること 昔はどうだったか
浴槽に入る前に体を洗う・かけ湯をする 一度沸かした湯を、家族が順番に使っていました。湯を清潔に保つ入り方で使い回していました
「一番風呂」という言い方 最初に入る人は、誰も使っていない湯に入れました。入る順番は家ごとに決まっていました
湯船にふたをする 次の人が入るまで、湯気を逃がさないようにしていました。沸かし直せば薪が要ります
追い焚き 一度沸かした湯を、焚き口で温め直して使っていました
残り湯を次の日まで取っておくこと 湯を捨てずに取っておきました。今は入浴剤を使った日の残り湯の扱いが商品ごとに決まっていて、ReNELU SPARKLING SPA TABLET の残り湯は洗髪や洗濯にはご使用いただけません

湯を温め直す手当ては、今は給湯器の機能になっています。追い焚きの仕組みと、足し湯や高温さし湯との違いは追い焚きとは?に書きました。

7. よくある質問(FAQ)

Q. 昔のお風呂はどんな形でしたか?

始まりは浴槽に湯をためてつかる形ではなく、湯気で蒸す蒸し風呂が中心でした。湯につかる形が広まるのはそのあとで、江戸時代の銭湯では、湯気を逃がさない戸棚風呂や柘榴口といった作りが使われました(1節・2節)。

Q. お風呂を昔風に言うと何といいますか?

屋敷の中で湯を使う部屋は「湯殿」、湯を使う施設は「湯屋」と呼ばれていました。「風呂」はもともと湯気で蒸す形を指す言葉でした(1節)。

Q. 五右衛門風呂とはどんなお風呂ですか?

鉄の釜を下から直接焚いて沸かす浴槽です。釜の底が熱くなるため、木のふたや底板を沈め、その上に足を乗せて入りました(3節)。

Q. 昔は毎日お風呂に入っていたのですか?

家で沸かすには水を運び、薪を割って火の番をする手間がかかったため、毎日ではない家もありました。町では、銭湯で湯に入る形が広まっていました(2節・4節)。

Q. 家にお風呂がある「内風呂」はいつから当たり前になりましたか?

大正から昭和にかけて浴槽の素材が変わり、住宅に給湯の設備が入ってから広まりました。それまでは銭湯と家の風呂が並んで使われていました。洗い場のタイルや、組み立てて運び込むユニットバスが広まったのもこの流れです(3節)。

Q. 昔のお風呂の習わしで、今も残っているものはありますか?

湯に入る前に体を流すこと、かけ湯、「一番風呂」という言い方、湯船にふたをすること、追い焚きが残っています。どれも、家族で一度沸かした湯を順番に使っていたころの入り方と重なります(6節)。

Q. 昔のお風呂の写真や道具は、どこで見られますか?

各地の郷土資料館や博物館で、昔の暮らしの道具として風呂桶や湯を運ぶ桶が展示されていることがあります。住んでいる地域の資料館の展示を調べてみてください。

8. まとめ|蒸す形から、過ごす時間へ

昔のお風呂は、湯気で蒸す形から始まりました。江戸時代には町の銭湯が湯に入る場所になり、家に据える木の浴槽は、水を運んで薪で焚くものでした。明治時代以降は洗い場にタイルが貼られ、家庭に給湯の設備が入って、現代の内風呂の形になります。日本の風呂の歴史は、蒸す形から湯につかる形へ、そして家の中へと移ってきた流れとして見られます。

姿が変わっても、かけ湯、一番風呂、ふたをすること、追い焚きのように、湯を分け合っていたころの名残は今の入り方に残っています。

変わったのは、入るまでの手間です。蒸し風呂のころから、お風呂は体を清める場所とひと息つく場所の両方で、日本人の暮らしの中で入浴文化はそれだけ長く続いてきました。湯を沸かす時間が要らなくなったぶん、今は湯につかる時間に何を置くかを選べます。

※本記事は、日本のお風呂の移り変わりと、今の入り方に残っている習わしの整理です。※本品は医薬品・医薬部外品ではありません。